後に行われた日米のテレビ中継のスロー映像解析において、西岡剛の足はランディ・ウィンのグラブに白球が収まった後もベースにしっかりと接しており、完全な「正当なタッチアップ」であったことが科学的にも証明されています。にもかかわらず、なぜボブ・デービッドソン球審は現場の管轄を越境し、自ら判定を覆す暴挙に出たのでしょうか。
第一の要因として挙げられるのは、当時の国際大会における審判団の編成と「クルーチーフ(審判主任)」としての権威の乱用です。この試合の塁審を務めていたのは国際野球連盟(IBAF)派遣の外国人審判員たちであり、メジャーリーグの第一線で審判を務めるデービッドソンにとって、彼らは格下の存在と映っていました。アメリカ代表監督から詰め寄られた際、キャリアの浅い外国人審判の判定を信じるよりも、自身の直感とメジャー審判としての傲慢なプライドを優先させてしまった構造が透けて見えます。
第二に、当時の野球規則における「アピールプレイの扱い」を意図的に歪曲させた疑いです。外野飛球の捕球確認と走者の離塁確認は三塁塁審の責任範囲であり、球審がその判定を自ら上書きすることは極めて異例の措置でした。ルール上、他審判へ意見を求めることは認められているものの、より離れた位置にいた球審が至近距離で見ていた塁審の判定を否定する根拠はどこにも存在しなかったのです。
さらに現場の混乱を決定づけたのが、当時はまだ現在のような「ビデオ判定(リプレイ・レビュー制度)」が存在しなかったという時代背景です。スタジアムの大型スクリーンにどれほど決定的なリプレイが映し出されようと、一度グラウンド上で下された宣告は不可逆であり、その閉鎖的な権力構造が最悪の形で作用してしまったと言えます。