分断後も火種は消えませんでした。北アイルランド国内では、イギリス残留を望むプロテスタント系住民(ユニオニスト/ロイヤリスト)が政治・経済の実権を握り、カトリック系住民(ナショナリスト/リパブリカン)に対して激しい差別政策を行いました。
1960年代後半、カトリック側による公民権運動が激化すると、過激派組織IRA(アイルランド共和軍)と親英派武装組織、そして治安維持に乗り出したイギリス軍が衝突。30年間にわたり3,500人以上の命が奪われたこの内戦状態は「北アイルランド紛争(The Troubles)」と呼ばれます。1972年の「血の日曜日事件」に代表される悲惨な武力衝突は、世界中に衝撃を与えました。
この泥沼の争いに終止符を打ったのが、1998年4月に署名されたベルファスト合意(聖金曜日協定)です。この協定により、北アイルランドの将来は「住民投票による自己決定」に委ねられることとなり、武力行使の停止、アイルランド・北アイルランド間の国境検問所の撤廃、権力分担政府の設立が定められました。現在私たちが目にする平穏な南北関係は、この合意の基盤の上に成り立っています。