ネット検索の世界では、時として事実無根の仮説が真実味を帯びて一人歩きすることがあります。「富山ぎんぎょ」に関しても、一部のWeb掲示板で「富山湾の海底谷で発見された新種の銀色深海魚ではないか」というデマやジョークが真面目に論じられた時期がありました。
この誤解が一定の信憑性を帯びてしまった構造的背景には、富山湾が誇る自然環境があります。富山湾は「天然の生け簀」と称され、水深300メートル以上の日本海固有水にはホタルイカ、シロエビ、ゲンゲ(幻魚)といったユニークな水産資源が無数に生息しています。「ゲンゲ」という実在の深海魚が存在するがゆえに、「ぎんぎょ」という聞き慣れない名前も新手の珍魚だと連想されやすかったのです。
メディアリテラシーの観点から言えば、これは「地域の既存イメージ(深海魚の宝庫)」に「未知の方言の響き」が無批判に接合された認知バイアスの一種です。言葉のルーツを丁寧に紐解けば、そこに怪異な魚はおらず、親しみ深い金魚と名店、そして地元銀行の姿があるのみです。