現在では名古屋駅の顔として定着している金の時計ですが、その誕生は1999年12月にまで遡ります。JR東海が社運を賭けて推進した巨大複合ビル「JRセントラルタワーズ」の開業に伴い、新時代のステーションシンボルとして設置されました。
時計のデザインに「ゴールド」が採用された背景には、名古屋城の天守に君臨する「金の鯱(しゃちほこ)」の伝統文化を現代的な高層建築と融合させるという明確な意図がありました。単なる時刻表示器にとどまらず、名古屋のアイデンティティと発展を象徴するパブリックアートとして構想されたのです。
当時、駅構内の案内サインや待ち合わせ拠点は分散しており、来訪者が迷いやすい構造が長年の課題でした。JR東海の開発資料や当時の報道記録を紐解くと、東の「金の時計」、西の「銀の時計」という直感的なカラーリングと視覚的コントラストを中央コンコースの両端に配置することで、歩行者のオリエンテーション(方向認識)を劇的に向上させる都市工学的な狙いが込められていたことが分かります。