調理の際、ニラの根元を硬いからという理由で2〜3センチほど切り落とし、ゴミ箱へ捨ててしまっているケースが後を絶ちません。しかし、植物生理学および食品機能学の視点から見れば、これは極めてもったいない習慣です。ニラは「緑の葉先」と「白い根元」で蓄えている栄養素の役割が二極化しています。
まず、強い香りの正体である揮発性化合物「硫化アリル(アリシンの前駆体であるアリイン)」は、外敵から身を守るために地中近くの根元部分に圧倒的に濃縮されています。成分分析データによれば、根元に含まれる硫化アリルの濃度は、柔らかい葉先部分の約3.8倍から4倍に達します。この成分こそが、血液凝固を抑えて血流を促し、後述するビタミンB1の代謝を劇的に助けるキーマテリアルです。
一方で、日光を浴びて濃い緑色を帯びた葉先には、緑黄色野菜としての卓越したポテンシャルが詰まっています。体内でビタミンAに変換されて皮膚や粘膜のバリア機能を高めるβ-カロテンは、100gあたり約3500μgとホウレンソウにも匹敵する含有量を誇ります。さらに、抗酸化作用を担うビタミンCやビタミンE、造血に関わる葉酸、腸内環境を整える不溶性食物繊維は葉先に豊富です。
つまり、免疫力を高めて活性酸素を除去したいなら葉先、エネルギー産生を加速させてスタミナを呼び戻したいなら根元が主役になります。根元を切り落とすことは、ニラを買っておきながらその薬効の半分を自ら手放しているようなものです。土汚れを流水でしっかり落とした上で、根元こそ余さず使い切るのが鉄則と言えます。