仁比山神社の創建は、奈良時代の天平元年(729年)に遡ります。聖武天皇の勅願により、名僧・行基がこの地に分け入り、山王権現を祀ったことが始まりと伝えられています。平安時代後期には仁比山護国寺が建立され、比叡山延暦寺の末寺として隆盛を極めました。かつては山内に「仁比山三千坊」と称されるほどの多数の寺院・宿坊が立ち並び、神仏習合の大霊場として九州全域にその名を轟かせた経緯があります。
主祭神として祀られているのは大山咋命(オオヤマクイノミコト)。古来より山を司り、農業の育成や治水、醸造を守護する神として厚く信仰されています。そして、仁比山神社を語る上で欠かせない存在が、神のお使いである「猿(申)」です。
境内へ足を踏み入れると、一般的な狛犬の位置に鎮座する「狛猿」をはじめ、ユーモラスな表情を浮かべる猿の彫刻が随所に配されていることに気づきます。猿は「魔が去る(申)」「勝る」に通じる縁起の良い動物とされ、日吉・山王信仰のシンボルとして厄災を退け、福を招く役割を担ってきました。12年に一度巡ってくる「申年(さるどし)」の大祭では、秘仏のご開帳や特別な神事が執り行われ、全国から参拝者が詰めかけます。