リスナーが「聴くだけで涙が出る」「胸が締め付けられる」と語る最大の理由は、大森元貴の手による緻密な歌詞構成とボーカルの掛け合い(パート分け)にあります。
楽曲の前半では、男性目線と女性目線の心情が交互に歌われます。「貴方の声で解れてゆく」「貴方の足跡を辿った」と、お互いが相手をかけがえのない存在として意識しながらも、どこか「いつか終わってしまう関係」を予感している様子が静かなピアノに乗せて描かれます。
音楽理論および演出の観点から特筆すべきは、サビにおけるパート分けの構造です。
一般的な男女デュエット曲では、サビになると同時に主旋律とハーモニーを重ねてユニゾンやハモリを聴かせることが主流です。しかし「点描の唄」では、サビの主要フレーズにおいて二人が同時に同じ言葉をハモるのではなく、「一方が歌ったフレーズを追いかけるように、もう一方が感情を乗せて返す(コール&レスポンス/対位法的なアプローチ)」手法が多用されています。
この「同じ空間にいながら、完全に重なり合うことはできない」という音響的な距離感こそが、聴く者に無意識の切なさを抱かせる仕掛けとなっているのです。