かつて渋谷公会堂を熱狂させ、出待ちのファンが数千人規模で押し寄せた「ボキャブラブーム」。あれから四半世紀以上が経過した現在、ボキャブラ芸人の格差と成功者のコントラストは、日本のお笑い史上でも類を見ないほど極端な広がりを見せています。
ピラミッドの頂点に君臨し続けているのは、説明不要のメガヒットMCたちです。太田光と田中裕二による「爆笑問題」は、当時から知性派漫才のバックボーンを持ち、ブームに頼らない批評精神で独自の地位を築きました。また、「海砂利水魚」として出演していた上田晋也と有田哲平は、改名して「くりぃむしちゅー」となった後にトークスキルを開花させ、現在も全世代から圧倒的な支持を集める司会者へと登り詰めました。トリオとしての個性とキャラクターの親しみやすさを武器にした「ネプチューン」もまた、ゴールデンの長寿番組を複数牽引し続けています。
しかし、その華々しい光の裏側には、強烈な影が存在します。「ボキャブラ芸人が消えた理由」を語る上で欠かせないのが、番組終了と同時に訪れた極端な仕事の激減です。ブーム絶頂期には学園祭や地方営業が1日に何本も入り、ボキャブラ芸人の最高月収と評判が週刊誌を賑わせました。当時の所属事務所関係者の回顧録によれば、中堅・若手であっても月収300万〜500万円、人気トップクラスでは月収1,000万円を超えた者も少なくありませんでした。ところが、ブームが沈静化するとオファーは潮が引くように消失し、給与明細が数万円にまで急落する事態が相次ぎました。
現在、テレビで見かけなくなった芸人たちの多くは、舞台俳優、ナレーター、構成作家、飲食店経営など、自らの生き残りをかけたセカンドキャリアを歩んでいます。華やかな脚光を浴びたからこそ味わった転落の痛みと、そこから立ち上がったサバイバル劇こそが、ボキャブラ芸人の現在を形作るリアルな実相です。