なぜ「Raw egg over rice」という表現が敬遠されるのか。最大の要因は、英語圏において「Raw egg(生卵)=サルモネラ菌に汚染されているハイリスクな未調理物」という強烈な衛生観念が刷り込まれているからだ。日本人にとっての「Raw fish(刺身)」は世界的な寿司ブームで定着したが、生卵に対する警戒心は依然として極めて高い。
欧米の一般家庭や教育現場では、幼少期から「生の卵液を舐めてはいけない」「クッキー生地を焼く前につまみ食いすると激しい食中毒になる」と徹底して指導される。彼らの耳には「Raw egg over rice」というフレーズが、まるで「生肉をご飯の上に乗せて食べる料理」と言われているかのようなショッキングな響きとして届いてしまうのだ。
加えて、英語の「Raw」には「未加工の」「粗野な」「調理を放棄した」といった無骨なニュアンスが含まれやすい。日本人が愛着を込めて呼ぶTKG(Tamago Kake Gohanの略称・スラング)のような、ふんわりとした親しみやすさや美味しさは一切伝わらない。食欲をそそるためには、食材そのものの状態ではなく「どのように調和した料理なのか」を描写する言葉を選ぶ必要がある。