身体に墨を入れる文化が爆発的な芸術的昇華を遂げたのは、江戸時代後期のことだ。その立役者となったのが、奇想の絵師として知られる歌川国芳である。彼が描いた武者絵シリーズ『水滸伝豪傑百八人』は、当時の江戸っ子たちを熱狂の渦に巻き込んだ。躍動する豪傑たちの肌にびっしりと描かれた浮世絵の意匠は、実在の彫り物師たちに強烈なインスピレーションを与えた。
国芳の手によるダイナミックな武者や怪異、そして背景を彩る花々の構図は、現代の刺青表現の原点となった。武士の権威に対する反骨精神と、町人文化の粋が融合した独自の美学。浮世絵の木版画が持っていた鮮明な輪郭線と豊かな色彩感覚は、皮膚という特異な媒体の上で今も生き続けている。