遺体が発見された後、どのような法的手続きと経緯をたどって身元が特定されるのか。このプロセスは一般にはほとんど知られていません。警察が遺体を発見または引き継いだ場合、直ちに現場での実況見分と検視が行われます。
樹海遺体の身元特定と経緯は、大きく以下の段階を経て進められます。
- 現場保存と実況見分:所轄警察署の鑑識係が臨場し、周囲の足跡、木々の結び目、遺留品の配置をミリ単位で記録。事件性の有無(他殺の痕跡がないか)を慎重に排除します。
- 検案および司法・行政解剖:山梨大学医学部法医学教室などの専門医によって死因の究明が行われます。死後経過時間、外傷の有無、服毒の痕跡などが科学的に調査されます。
- 所持品・生体情報の突合:衣類のタグ、所持金、運転免許証などの遺留品を精査。白骨化が進んでいる場合は、歯科治療痕(デンタルチャート)の照合や大腿骨等からのDNA型鑑定が実施されます。
- 行方不明者届とのデータマッチング:全国の警察データベースに登録されている行方不明者届(旧・家出人捜索願)と照合し、身体的特徴や所持品の一致を検証します。
- 遺族への連絡と引き渡し:身元が確定した場合、警察から遺族へ連絡が入ります。対面確認を経て遺体が引き渡され、地元での火葬または搬送が行われます。
身元がどうしても特定できない場合、遺体は法律に基づき「行旅死亡人(こうりょしぼうにん)」として処理されます。発見場所の自治体(富士河口湖町や鳴沢村など)の首長が火葬を代行し、官報に身体的特徴や着衣の状況を公告した上で、無縁仏として一定期間納骨堂に安置されます。この費用は最終的に自治体の税金で賄われることになり、地域行政にとっても極めて重い負担となっています。