この失敗の背景には、明確な化学的メカニズムが存在する。一般的に、高い洗浄力を持つメインの洗濯洗剤には「陰イオン(アニオン)界面活性剤」や非イオン界面活性剤が主成分として使われている。一方で、衣類を柔らかく仕上げ静電気を防ぐ柔軟剤の主成分は「陽イオン(カチオン)界面活性剤」だ。
日本石鹸洗剤工業会などの業界指針でも示されている通り、プラスとマイナスの電荷を持つ成分が洗濯槽の中で同時に混ざり合うと、瞬時に電気的に結びついて水に溶けにくい結合体を形成する。その結果、洗剤は汚れを落とす力を失い、柔軟剤は繊維をコーティングする力を失ったまま排水溝へと流れていく。自動投入機能を持つ洗濯機が洗剤と柔軟剤の投入タイミングを厳密に分動させているのは、この致命的な失活を防ぐためだ。