間柴久美は、本作の主人公・幕之内一歩が長年思いを寄せるヒロインである。物語初期、パン屋で働いていた彼女は後に看護師へと転身した。この職種への変化は、単なる設定の変更ではなく、彼女の精神的成長と物語上の役割を決定づける重要な意味を持っている。
日々の業務で怪我人や病人と向き合う看護師という職業柄、久美は傷つく人間の痛みや過酷な現実を誰よりも深く知っている。それゆえに、命や体を削りながら戦うボクシングという競技に対して、人一倍強い恐怖と拒絶感を抱かずにはいられない。一歩の身体を心配し、彼がリングを下りた後も「二度と復帰してほしくない」と心から願う彼女の姿勢は、極めて現実的で人間らしい愛情の裏返しなのだ。