音楽パッケージにアートワークを施すという概念は、1939年に米コロムビア・レコードのアートディレクターであったアレックス・スタインワイスが発案したのが始まりとされています。それまで無地の茶色い厚紙スリーブに入っていたレコードに鮮やかなデザインを採用したところ、売上が800%以上跳ね上がったという記録は、音楽業界における視覚表現の重要性を証明する決定的な転換点でした。
LPレコード時代(約31cm四方)は、キャンバスとしての巨大さを活かしたコンセプチュアルなアートが次々と誕生。その後、1980年代後半から1990年代にかけてのCD全盛期(約12cm四方)へと移行し、サイズは縮小したものの、歌詞カードや複数面のブックレット、特殊ケース加工など、ファンが「所有する喜び」を感じる工夫が凝らされました。
この時代に生まれた代表的な消費行動が「ジャケ買い」です。アーティストの知名度や試聴音源の有無に関わらず、店頭に並んだジャケット写真の格好良さや直感的な魅力だけを頼りにCDを購入する行為を指します。
ストリーミングサービスが主流となった今日、「ジャケ買い」の概念はデジタル上で再定義されています。Apple MusicやSpotifyのプレイリスト画面、SNSのレコメンドにおいて、ユーザーはわずか0.5秒のサムネイル接触で再生するか否かを判断しています。デジタル時代のジャケ写は、単なるパッケージではなく「クリック率(CTR)を最大化する広告看板」としての役割を担うようになりました。