プロが実践するスプリットの投げ方と握りの極意|肘を痛めず鋭く落とす

プロが実践するスプリットの投げ方と握りの極意|肘を痛めず鋭く落とす

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打者がスプリットに対して豪快に空振りを喫する最大の要因は、ボールがホームプレートへ到達する最後の0.05秒間における落差の急激な変化にあります。人間の視覚と脳の予測処理は、投手のリリースから約0.2秒間の球筋を見てボールの到達軌道を割り出します。スプリットはこの予測アルゴリズムを物理的に破綻させる球種です。

最大のカギを握るのが、スプリットの回転数の秘密です。一般的なプロ投手のストレートは毎分2200〜2400回転(rpm)前後の強いバックスピンがかかっており、この回転がマグヌス効果による揚力を生み出し、重力による落下を押しとどめます。これに対してスプリットは、人差し指と中指でボールを挟み込んで摩擦を逃がすことで、回転数をストレートの半分程度である1000〜1400rpm前後まで急減させます。

さらに2020年代以降の空力解析で注目される「シーム・シフト・ウェイク(SSW)」現象も関係しています。回転軸が斜めに傾き、かつ縫い目の配置によってボール後方に不均一な空気の剥離が起きると、揚力が急激に失われてボールは重力に引っ張られるように鋭く沈みます。打者からすれば「高めの直球」と認識してスイングを始めた軌道から、ミートの瞬間に急降下してバットの下をすり抜ける感覚に陥るのです。

ここで決定的な役割を果たすのがスプリットのリリースポイントです。かつて日米通算で圧倒的な実績を残した上原浩治氏は、自著や解説の場で「スプリットを投げる際、ストレートとフォームや腕の振りを一切変えない」ことを繰り返し強調しています。手元で落とそうとしてリリース直前に手首を寝かせたり、ボールを撫でるように離したりすると、球速が落ちて打者に球種を見破られます。直球と全く同じ腕の振りとリリースの高さから放たれて初めて、打者の手元で急激に沈む錯覚が完成します。

井上 凛
著者

井上 凛

心身ともに健康で持続可能なライフスタイルをテーマに、最新のウェルネストレンドを発信中。