救急医療現場やSNS・コミュニティ上の闘病手記において、非常に頻繁に見られるのが「市販の胃腸薬を飲んで様子を見ていたら手遅れになりかけた」というケースです。
急性虫垂炎を発症した患者の多くは、発症初期の段階で「胃のあたりがもやもや痛い」「食べ過ぎで胃もたれした」と自己判断しています。日本外科学会の統計データでも、虫垂炎患者の約70%以上が初発症状として心窩部(みぞおち)の不快感や痛みを訴えており、最初から右下腹部が痛むケースばかりではありません。神経反射の関係で、内臓痛の段階では脳が痛みの発生源を胃の周辺と錯覚してしまうためです。
「歩くと一歩ごとにお腹に痛みが突き刺さり、タクシーに乗る振動すら耐えられなかった」「階段を下りるときにかかとを着地させると激痛が走った」というリアルな体験談は、腹膜刺激症状が完成している典型例です。単なる胃の不調であれば、歩行の振動そのものでうずくまるような激痛に至ることは稀であるという事実を認識しておく必要があります。