2012年、布袋寅泰が50歳を迎えたタイミングで敢行されたイギリス・ロンドンへの一家移住は、世間を大いに驚かせました。日本国内では不動のトップロックスターであり、地位も名声も確立していた布袋が、なぜあえて無名の新人ギタリスト同然の立場に戻ってまで海を渡る決断を下したのか。その背景には、複合的な要因が存在します。
最大の動機は、布袋が10代の頃から抱き続けてきた「ロックの本場・イギリスで勝負したい」という純粋なアーティストとしての渇望です。50歳という節目を迎え、「今行かなければ一生後悔する」という危機感に突き動かされた布袋を、妻である今井美樹は全面的に支持しました。今井自身も日本国内での歌手・女優活動を一旦セーブし、異国の地で主婦として夫の挑戦を支える道を選びました。
もう一つの決定的な要因は、当時10歳を迎えていた長女の教育環境とプライバシーの保護です。日本国内にいれば、両親が布袋寅泰と今井美樹という著名人であるがゆえに、常に週刊誌のカメラや世間の好奇の目に晒され続けます。パパラッチ規制が厳しく、個人の自立を尊重するイギリス社会は、子供を健やかに育てるためのシェルターとしても最適な選択肢でした。実際にロンドン移住後、一家は現地の穏やかな住宅街で、極めて地に足の着いた暮らしを手に入れることに成功したのです。