現住建造物等放火罪はなぜ死刑もあるのか?非現住との差や量刑を解説

現住建造物等放火罪はなぜ死刑もあるのか?非現住との差や量刑を解説

現住建造物等放火罪はなぜ死刑もあるのか?非現住との差や量刑を解説の具体的な内容に迫る! 専門的な視点でご紹介しています。

放火事件の立件において、検察と弁護側の最大の激突点となるのが「現住性」の有無です。対象となった建造物が「現住建造物」にあたるのか、それとも「非現住建造物」にとどまるのかによって、科される刑罰の重さは文字通り天と地ほどに分かれます。

現住建造物等放火罪における対象は、条文上「現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑」と定められています。ここで法的に極めて重要な判断基準となるのが、以下の2つの概念です。

  • 住居性(現に人が住居に使用):人が日常生活の拠点として起居・就寝に使っている状態を指します。重要なのは、犯行時に住人が室内にいたかどうかは問われない点です。住人が仕事や旅行、買い物で一時的に留守にしていたとしても、生活の拠点である限り「現住建造物」とみなされます。
  • 現在性(現に人がいる):住居ではない建造物(オフィスビル、ホテル、学校、駅舎、飲食店など)であっても、放火の瞬間に犯人以外の誰かが実際に建物内に存在していれば、この要件を満たします。

裁判実務上、特に争われやすいのが「犯人自身の持ち家」に自ら火を放ったケースです。たとえ不動産の名義が犯人単独であり、ローンを本人が支払っていたとしても、配偶者や子ども、親と同居している家であれば、他人が住居として使用している空間であるため、間違いなく現住建造物等放火罪が成立します。「自分の財産を処分しただけ」という言い逃れは法的に一切通用しません。

また、過去の重要判例(大審院・最高裁判決の蓄積)では、住人が完全に転居して家財道具を引き払った空き家や、解体工事中の建物などは「現住性」が否定され、非現住建造物等放火罪(刑法109条)として処理される基準が確立しています。しかし、ホームレスなどが無断で寝泊まりしている廃墟であっても、放火時にその人物が内部にいれば「現に人がいる建造物」として刑法108条の適用対象となります。

林 結菜
著者

林 結菜

エンタメ・カルチャー業界の深掘り取材を得意とし、現場のリアルな声をお伝えします。