バブル崩壊以降の長期停滞、そして近年のハイパーインフレと雇用形態の激変は、かつて日本を支えた「中流階級」の基盤を完全に解体した。職を失い、病に倒れ、離婚によって家族という最後の砦さえ失う——『星守る犬』で描かれた主人公の転落劇は、現代の日本人が誰しも抱える「明日は我が身」の恐怖と直結している。
行政の支援制度は存在するものの、自尊心が邪魔をして助けを求められない真面目な人々が、手続きの網の目から容易にこぼれ落ちてしまう構造は変わっていない。公的な助けが届かぬまま、社会との接点を一つずつ失っていくプロセスは、極めて静かで、かつ残忍だ。