木竜麻生という俳優を語る上で欠かせないのが、2018年に立て続けに公開され、映画界に大きな衝撃を与えた2本の主演・ヒロイン映画です。
瀬々敬久監督がメガホンをとった映画『菊とギロチン』では、応募者300人を超える過酷なオーディションを勝ち抜き、大正時代に実在した女相撲の力士・花菊役で映画初主演を飾りました。泥にまみれながら生き抜く力強い女性像を体当たりで演じきり、映画関係者を驚嘆させました。
さらに同年公開された野尻克己監督の映画『鈴木家の嘘』では、長男の突然の自死に直面し、悲嘆に暮れる家族を懸命に支えようとする妹・富子役を好演。繊細な感情の揺らぎと、胸に迫る慟哭の演技は多くの観客の涙を誘いました。
これらの作品によって、彼女は第92回キネマ旬報ベスト・テン新人女優賞や第40回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞、第33回高崎映画祭最優秀新進女優賞、第73回毎日映画コンクールスポニチグランプリ新人賞など、その年の映画新人賞を文字通り総なめにしました。当時の特番インタビューや手記で語られた「役と真摯に向き合い、自分を偽らない」という愚直な姿勢が、今も彼女の演技の根底に流れています。