ヒトの足の間にすっぽりと収まる姿勢は、イヌ(Canis lupus familiaris)の祖先が過酷な自然界で培った生存本能に直結している。周囲を壁で囲まれた狭い空間は、外敵から背後を突かれない安全な「巣穴」の役割を果たす。太ももの適度な圧迫感と体温が、犬の神経系を即座にリラックスモードへと切り替えるのだ。
動物行動学(Ethology)の視点からも、この密着行動は極めて合理的と説明される。飼い主と肌を接し、互いに見つめ合ったり寄り添ったりする瞬間、両者の体内では「絆ホルモン」と呼ばれるオキシトシン(Oxytocin)の分泌が劇的に跳ね上がる。心拍数は落ち着き、ストレスホルモンであるコルチゾールは減少する。犬にとって飼い主の両脚の間は、世界で最も安心できるシェルターに他ならない。