極上の割り下を作るための現代的な基準値は、ズバリ「醤油 100ml:本みりん 100ml:清酒 50ml:砂糖(ザラメ)30〜40g」の設計にある。伝統的な和食・日本料理の世界では酒とみりんを同量にする手法も多いが、最新の家庭調理論では酒を控えめにし、みりんと砂糖の重層的な甘みを引き立てるアプローチが主流だ。
調合の成否を分けるのは加熱プロセスだ。鍋に酒とみりんを先に入れ、中火でしっかりと煮切ってアルコール分を飛ばす。沸き立つ湯気から酒香が抜け、芳醇な蜜のような香りに変わった瞬間、砂糖を投入して完全に溶かし込む。最後に本醸造の濃口醤油を一気に加え、フツフツと縁が泡立った瞬間に火を止める。決して醤油をグラグラと煮立たせてはならない。醤油特有の繊細な香気成分が揮発し、角が立ってしまうからだ。
この配合で作られたタレは、肉のタンパク質を硬化させず、加熱によって溶け出す脂と完璧な乳化を果たす。冷ます過程で味が落ち着くため、食べる数時間前、あるいは前日に仕込んで寝かせておくのが名店のセオリーである。