「ドラッグストアに行きたいのに、ロンドンの街中で首を傾げられた」「薬を買いたいと伝えたのに、スーパーマーケットを指差された」という体験談は、ネットの掲示板やSNSでも頻繁に報告されています。このコミュニケーションのすれ違いが生じる最大の要因は、英語圏における地域ごとの単語の定着度と店舗定義の違いにあります。
英語学習サイト「DMM英会話」や各種語学調査のデータが示す通り、北米(アメリカ・カナダ)において「drugstore」は極めてポピュラーな単語です。しかし、イギリス、オーストラリア、ニュージーランドなどの国々では、伝統的に薬局を「chemist」または「chemist’s」と呼ぶ文化が根強く残っています。イギリス最大手のヘルス&ビューティチェーンである「Boots(ブーツ)」の店頭にも、長年「Chemist」の看板が掲げられてきました。ロンドンの住民にとって「drugstore」はアメリカ映画の中で耳にする表現であり、自分たちの日常空間を指す言葉としては認識されにくいのが実情です。
さらに、単語の語感に対する受け止め方の違いも見逃せません。「ドラッグストア 英語 通じない 理由」として言語学者が指摘するのは、イギリス英語において「drug」という単語単体は「違法薬物・麻薬」を想起させるニュアンスがアメリカ英語よりも強いという点です。もちろん文脈から意図は察知されますが、街中で不意に「Where is the drug store?」と聞かれると、一瞬の警戒心を抱かせてしまうリスクがあります。
また、日本人が発音するカタカナ英語の「ド・ラ・ッ・グ・ス・ト・ア(7モーラ)」という平坦なアクセントも、現地で聞き取ってもらえない典型例です。英語本来の「drugstore」の発音記号は「/ˈdrʌɡ.stɔːr/」であり、第一音節の「DRUG(短く弾むアの音)」に強い強勢を置き、「store」の母音を伸ばしながら舌を引く独特の調音が必要です。カタカナ発音のまま語尾を伸ばして発音しても、ネイティブの耳には全く別の単語として処理されてしまいます。