ドラマ版の最終回では、今日子の天井に書かれた「お前は今日から、掟上今日子。探偵として生きていく」という謎めいた文字の存在が示唆され、彼女が自身の過去とどう向き合っているのかが描かれました。原作小説における掟上今日子の正体・過去の真相についても、西尾維新らしい緻密な筆致で少しずつ外堀が埋められています。
原作において今日子は、自身がなぜ記憶喪失(前向性健忘)になったのか、本当の名前は何なのかを知らないまま探偵業を営んでいます。天井のメッセージは「誰か」によって残されたものであり、彼女自身はその過去を探ることを基本的に拒否しています。「過去を知ることで今の自分(探偵としての誇り)が崩れてしまうかもしれない」という恐れと覚悟を抱えているためです。
そして最も読者の心を揺さぶるのが、隠館厄介と掟上今日子の恋愛の結末です。今日子は眠ると厄介の存在を忘れてしまうため、厄介は出会うたびに「初対面」として自己紹介し、毎回ゼロから信頼関係を築かなければなりません。原作小説が進むにつれ、今日子の手帳や無意識の反応の中に厄介への特別な信頼が刻まれているような描写が随所に現れます。劇的な結ばれ方こそしないものの、「どれだけ忘れられても彼女を愛し続ける厄介」と「毎日彼に惹かれ直す今日子」という、切なくも美しい関係性が物語の究極の着地点として描かれています。