ピラミッドの上に浮かぶひとつの目。この不気味とも取れる視覚イメージは、長年にわたり世界征服を企む悪の象徴として消費されてきた。しかし、歴史的な事実関係はまったく異なる。プロビデンスの目(摂理の目)は、もともとキリスト教絵画において神の永遠の監視と慈悲を表すモチーフとして普遍的に使用されていたものだ。
18世紀ヨーロッパでは、教会だけでなく官公庁の建物や出版物の装飾としても頻繁に採用されていた。フリーメイソンがこの意匠を取り入れたのは組織の創設から随分と後のことである。都市伝説愛好家が唱えるような「世界を裏で操るための秘密の目印」という言説は、19世紀以降のオカルティズムブームと商業的エンターテインメントが捏造した文脈に過ぎない。