原作・吉田修一の傑作ミステリーを映画化するにあたり、メガホンをとった李相日監督の演出は妥協を一切許さないことで知られる。登場人物の感情が本物になるまで徹底的に追い詰める監督の手法に対し、彼女は正面からぶつかりに行った。
主演を務めた渡辺謙もまた、現場での彼女の覚醒を目の当たりにした一人だ。ベテラン俳優たちが重苦しい空気に呑まれそうになる中、彼女が放つ圧倒的な集中力と狂気を含んだ存在感に、渡辺自身も身が引き締まる思いだったと後年のインタビューで明かしている。監督からの厳しい要求に涙を流しながらも、決してカメラの前から逃げ出さなかった根性こそが、彼女の真価を証明してみせた。