Web上の安易な解説記事を鵜呑みにした結果、現場で手痛い失敗を喫する退職者が後を絶ちません。最も蔓延している誤解を暴き、冷徹な現実を直視する必要があります。
最大の罠は、「退職届に『パワハラによる会社都合退職』と明記して送れば、会社が自動的に会社都合の離職票を発行してくれる」という幻想です。前述した助成金問題やコンプライアンス責任を恐れる企業組織は、退職届に何が書かれていようとも、ハローワークへの届出書類(雇用保険被保険者離職証明書)には平然と「自己都合退職」のコード(4Dなど)を記載して提出します。
退職届にパワハラ理由を記載する真の目的は、「会社を納得させること」ではありません。「労働者本人は一貫してパワハラによる非自発的離職を訴えていた」という事実を、後日の公的審査機関(ハローワークや労働局のあっせん委員)に対して客観的に示すアリバイを確立することにあります。
もし退職届に「一身上の都合」と書いてしまっていた場合、ハローワークで後から「実はパワハラだった」と主張しても、担当官から「ではなぜ退職届には一身上の都合と自筆で書いたのですか?」と厳しく追及され、会社側から「本人の完全な自由意思による退職だった」と反論された際に極めて不利な立場へと追い込まれます。退職届の記述は、あなた自身の将来の証拠能力を守るための「楔(くさび)」なのです。