喫煙スペースの絶対数が減る一方で、業界と都市計画が推し進めたのが「煙の出ない空間への優遇」です。現在、オフィスビルや駅前再開発地区で新設される喫煙所の多くは加熱式タバコ専用喫煙スペースとして設計されています。
受動喫煙防止対策の技術的基準において、紙巻きタバコ由来の副流煙・粉塵を遮断するためには、毎秒0.2メートル以上の排気風速と高性能集塵機を備えた強固な排気設備が求められます。これには数百万円単位の初期投資と月十数万円の電気代・保守費が必要です。一方で、加熱式専用室であれば換気設備の基準が大幅に緩和されるため、ビル管理会社や飲食店にとってはコストを抑えて喫煙ニーズに応える唯一の選択肢となっています。
この結果、喫煙可能カフェ店舗の評判にも明暗が分かれています。大手カフェチェーンの店舗展開を見ると、加熱式のみ「自席での飲食をしながら喫煙可能」とするフロアを残す一方、紙巻きは「完全密閉型の狭小立ち寄りブース」へと追いやられています。飲食サイトの口コミレビューを検証しても、
「加熱式席はゆったり座れるのに、紙巻き用のブースは満員電車のように窮屈で落ち着かない」 「コーヒーを片手に一服できる場所が本当に無くなった」
といった紙巻き派の悲鳴が目立ちます。もはや同じタバコであっても、吸うデバイスによって都市空間における居場所の格差が決定的に固定化された形です。