両者を分かつ最大の境界線は、微生物が生きたまま存在しているか否かという点にある。ナチュラルチーズは、新鮮な生乳に酵素やスターター(乳酸菌)を加えて凝固させ、水分を抜いて熟成させた伝統的な発酵食品だ。時間が経つにつれて味わいや香りが深まり、日々その表情を変えていく。文字通り「生きている食品」と言える。
一方のプロセスチーズは、1種または複数種のナチュラルチーズを粉砕し、加熱殺菌しながら加熱融解して再成型したものだ。この熱処理技術の根底には、19世紀のフランスの細菌学者ルイ・パスツールが確立した低温殺菌法の理論が活きている。加熱によって組織内の乳酸菌や酵素の活動が完全に停止するため、購入後に熟成が進むことはなく、品質と味が一定に保たれる仕組みだ。