従来の栗剥きといえば、専用のハサミ型皮剥き器を使ったり、包丁で削ぎ落とすように剥いたりするのが一般的でした。しかし、これでは可食部が削れて歩留まりが悪くなるだけでなく、渋皮が実に食い込んでボロボロになってしまいます。ガッテン流栗の剥き方が革命的と称された理由は、力任せではなく細胞構造と熱力学の原理を利用した点にあります。
鬼皮はセルロースで固められた強固な鎧ですが、渋皮と果肉の間にはわずかな隙間が存在します。収穫したての栗をそのまま茹でると、熱によって果肉が膨張し、渋皮が果肉に強く圧着されてしまいます。ところが、一度冷凍してから熱湯につけると、内部の水分が膨張した後に急激な熱衝撃を受けることで、果肉と皮の間に微細な水蒸気の層(剥離層)が生まれます。この現象こそが、鬼皮だけでなく難関とされる渋皮まで一気に剥がれる物理的なカラクリです。
さらに、茹で上がった直後の急冷、あるいは余熱を利用した温度管理を行うことで、果肉組織を崩さずに適度な水分を保ったまま皮だけを分離させることが可能になります。道具に頼るのではなく、食材の物性を変化させるアプローチこそが本メソッドの真髄です。