荒涼とした送電線地帯での緊張感あふれるラストシーン。配達員によって届く謎の小箱。ベテランのサマセット刑事(モーガン・フリーマン)がナイフでテープを切り、中を覗き込んで絶句する。この一連のシークエンスにおいて、カメラは絶対に箱の内部を捉えない。視聴者が目にするのは、サマセットの戦慄した表情と、狂気に落ちていくミルズ(ブラッド・ピット)の葛藤だけだ。
人間は「見えなかったもの」に対して勝手に脳内で凄惨なイメージを補完してしまう。フィンチャー監督はこの心理的効果を完璧に計算し尽くしていた。直接的なグラフィック描写を一切排除しながら、観客に「頭部が入っていた」と100%確信させる演出。だが裏を返せば、画面上に揺るぎない確証は提示されていない。