職場における「ちゃん付け」が違法と判断されるか否か、その境界線はどこにあるのか。最新の労働法実務および蓄積された裁判例を照らし合わせると、明確な4つの判断基準が浮かび上がる。
第一の要素は「呼称の非対称性」だ。特定の性別や特定の部下にのみ「ちゃん付け」を適用し、他の同格社員には「役職名」や「さん」を用いている場合、合理的な理由のない差別的取り扱いと評価される。第二は「拒絶の意思表明に対する反応」である。被害者が不快感を示した、あるいは周囲が是正を促したにもかかわらず呼称を改めなかった場合、違法性は一気に跳ね上がる。
第三は「業務上の文脈と公私混同の度合い」であり、取引先の前や会議の場など公の場での軽視発言は人格権侵害の度合いが重いと判断される。そして第四が「組織の是正措置の有無」だ。被害の訴えがありながら放置した会社には、安全配慮義務違反に基づく高額な損害賠償リスクが直撃する。訴訟となれば、賠償金のみならず風評被害や採用活動への悪影響など、組織が被る実損は計り知れない。