古くからインターネットの掲示板や民間伝承で囁かれてきた俗説に、「ほくろはいじったり取ったりすると刺激で皮膚がん(メラノーマ)になる」という言説があります。しかし、現代医学において「良性のほくろを手術で切除したことが原因で悪性化する」という事実は明確に否定されています。
この誤解が生じた背景には、もともと初期のメラノーマであった病変を不完全な形で刺激してしまったり、不適切な施設で病変を残したまま削ってしまい、急速に進行した事例が混同されて語り継がれた経緯があります。適切な医療機関でダーモスコピー診断を受け、必要に応じて病理組織検査を行って完全切除すれば、切除が引き金となってがん化することはあり得ません。
また、文化的な視座に目を向けると、日本では伝統的な「人相学」や「ほくろ占い」が根強く親しまれています。目尻の「泣きぼくろ(異性運・情の深さ)」、口元の「艶ぼくろ・食いっぱぐれない福ぼくろ」、鼻筋のほくろなど、位置によって運勢や魅力を読み解く鑑法は今も人気を博しています。
しかし、本人が長年その位置にあるほくろに対して強いコンプレックスを抱き、対人関係で視線を気にして萎縮してしまうのであれば、運勢論に過度に縛られる必要はありません。現代の心理医学では、外見の微小な悩みが解消されることで自己効力感が高まり、対人行動が劇的に前向きになる心理的メリット(アピアランスケア効果)が高く評価されています。占いの意味を愉しむ心の余裕を持ちつつも、自らの心地よさを最優先に選択することが賢明なスタンスです。