天然繊維としての魅力を持つ両者ですが、その分子構造と原料は根本から異なります。木綿と絹の違いを理解する第一歩は、植物性繊維と動物性繊維という生物学的な出自の違いを知ることにあります。
木綿(コットン)はアオイ科ワタ属の種子毛から採取される植物繊維で、主成分はセルロース(約90%)です。繊維の中心に「中空(ルーメン)」と呼ばれる空洞があり、ねじれたリボン状の形状をしています。この中空構造のおかげで木綿の吸湿性と通気性は非常に高く、汗を素早く吸い取って外へ逃がす性能に優れています。
一方、絹(シルク)は蚕が吐き出す繭糸から作られる動物性タンパク質繊維で、主成分はフィブロイン(約75%)とセリシン(約25%)です。断面が三角形に近い形状をしており、プリズムのように光を乱反射させるため、真珠のような特有の気品ある光沢を放ちます。絹の特徴と肌触りにおける最大の強みは、人間の肌組成に極めて近い18種類のアミノ酸で構成されている点です。摩擦係数が低く、肌に触れた瞬間のなめらかさは他のどの繊維にも真似できません。
さらに、絹の保温性と季節感も見逃せないポイントです。絹の繊維内には無数の微細な空気層が含まれており、外気の寒暖差を遮断します。そのため「夏は涼しく、冬は暖かい」という優れた調温機能を持ち、通年で快適な衣服内気候を保ちます。
なお、アトピー肌や乾燥肌の方にとって敏感肌におすすめの生地として両者は頻繁に比較されます。刺激の少なさや保湿性という観点では人の肌成分に近いシルクが優位に立ちますが、汗を大量にかく場面や頻繁に煮沸・洗濯消毒を行いたい場合には、タフに扱えるオーガニックコットンが重宝されます。