インターネット上の相談掲示板では、「うちの猫は一度もふみふみをしてくれない。飼い主として愛されていないのではないか」という悲痛な書き込みが散見されます。しかし、動物行動診療科の現場取材から見えてきた結論は、そうした不安を完全に否定するものです。
猫ふみふみしない理由として最も有力なのは、生後2〜3ヶ月前後の離乳期を実の母猫や兄弟猫と理想的な環境で過ごし、精神的な親離れが自然に完了したというポジティブな背景です。過酷な早期離乳を経験しなかった猫は、精神的な自立を果たしているため、成猫になってから母乳を求めるような代償行動を取る必要がありません。また、野性味を残した警戒心の強い性格や、単純に足の裏(肉球)の触覚過敏によってフカフカした素材を好まない個体も存在します。ふみふみをしなくとも、スリスリと体を寄せてくる頭突きや喉を穏やかに鳴らす行為があれば、信頼関係は十二分に構築されています。
また、猫ふみふみオスとメスの違いに関する誤解も根強く残っています。「甘えん坊なオス猫のほうがふみふみしやすい」という通説は統計的にも一定の支持を集めていますが、注意すべきは未去勢のオスに見られる性行動との混同です。後ろ足を踏み踏みしながら毛布を噛み、腰を振るような仕草を見せる場合、それは甘えではなくマウンティング(交尾擬似行動)です。避妊・去勢手術の実施時期や性ホルモンの影響によって行動の質が大きく変化するため、甘えのニーディングと発情由来の動作を混同しない正確な理解が求められます。