茨城県のアンコウ漁は例年11月に本格化し、翌年3月下旬まで続く。しかし、真の美味を追求するならば「シーズン中のいつ訪れるか」というカレンダーの読み解きが極めて重要になる。
アンコウの身自体は11月の解禁直後からみずみずしく、淡白で上質な白身を楽しめる。ただし、この時期の肝はまだ発達途上にあり、どぶ汁のような濃厚さを求めるにはやや力不足が否めない。あん肝の脂の乗りが最高潮に達するのは、海水温が底を打つ12月中旬から2月中旬の厳冬期だ。この期間のアンコウは「肝が体重の2割から3割近くを占める」とも言われ、スープに溶け込むコクの深さが別格の次元に到達する。
2月後半を過ぎると、魚体は産卵期に向けた準備を終え、徐々に肝の脂を身や卵巣へと移行させ始める。3月に入ると鍋全体の味わいは軽やかな春の装いへと変化し、脂っこさが苦手な年配層にはむしろ好まれるが、「ガツンと濃厚な本場のどぶ汁」を体験したいのであれば、迷わず1月または2月上旬を狙って旅程を組むのが鉄則だ。