「うちの子は赤ちゃんの頃から寝息が大きくて可愛い」という飼い主の認識は、獣医学的には極めて危険な誤解を含んでいます。短頭種が発するガーガーという呼吸音や、睡眠時の激しいパグの危険ないびきは、空気の通り道が物理的に圧迫され、咽頭粘膜が激しく振動している証拠です。放置すると持続的な低酸素状態を招き、心臓や肺に過度な負担をかけ続けます。
病気の進行に伴い、興奮時や運動時にフレンチブルドッグの呼吸が荒い状態が長時間続いたり、犬のガチョウ鳴きのような呼吸困難(ゼーゼー、ガーガーと喉が鳴る吸気性呼吸困難)が現れたりします。代表的な短頭種気道症候群の症状は段階的に悪化するため、初期段階での気付きが欠かせません。
見逃してはならない初期症状および警戒レベルの兆候は以下の通りです。
- 軽度:安静時の軽微ないびき、鼻を鳴らすような呼吸音、軽い運動後のパンティング(開口呼吸)の長期化。
- 中等度:睡眠時無呼吸、運動不耐性(散歩を嫌がる、すぐに座り込む)、白っぽい泡状の胃液を吐く嚥下障害。
- 重度:チアノーゼ(舌や歯茎が紫色に変色)、失神、高体温による熱中症様発作、努力性呼吸(胸を大きく波打たせて呼吸する)。
特に見落とされやすいのが、胃腸障害との連動です。呼吸努力によって胸腔内が強い陰圧になる結果、胃酸や胃内容物が食道へ逆流し、慢性的な嘔吐や食道炎を併発する事例が臨床現場から多数報告されています。