自家製松前漬けのクオリティを左右するのが、素材の下ごしらえです。乾物特有の臭みを消し、タレをしっかり吸わせるための工程には明確な科学的理由が存在します。
まず、食感の主役となる松前漬け数の子下処理です。塩蔵数の子を使用する場合、真水で塩抜きをすると浸透圧の差で旨味が流れ出し、苦味成分(にがり分)が残ってしまいます。水1リットルに対して食塩小さじ1(約5g・濃度0.5%程度)を溶かした薄い食塩水に浸す「迎え塩」の手法を用います。3〜4時間ごとに塩水を替えながら半日ほどかけて塩を抜き、表面の薄皮(白い膜)を指の腹で優しく丁寧に取り除きます。その後、ペーパータオルで余分な水分を徹底的に吸い取ることが、生臭さを防ぐ最大のポイントです。
次に、出汁のベースとなる松前漬けスルメ昆布切り方です。スルメイカ(できれば無塩の天日干しスルメ)は胴と耳を使い、繊維を断ち切るようにキッチンバサミで幅1〜2mm、長さ4〜5cmの極細に切り揃えます。ハサミを入れる前に酒を少量霧吹きしておくと、適度にしなやかになり作業性が大幅に向上します。
昆布は、強烈な粘りとフコイダンを豊富に含む松前漬けがごめ昆布と、上品な出汁が出る真昆布をブレンドするのが理想的です。乾燥した状態のままハサミで1mm幅の千切りにします。野菜具材である松前漬け人参千切りも、昆布やスルメと同じく1〜2mm角の極細に揃えて切ることで、タレが均一に絡み、全体の食感が美しく調和します。