都内有数の花菖蒲園である葛飾区の水元公園や明治神宮御苑、愛知県知立市の無量寿寺(八橋)など、名所を訪れる鑑賞者の現場観察を続けると、開花時期の微妙なズレと環境設定が原因で混同が起きている実態が浮かび上がります。
SNSや園芸コミュニティの投稿を分析すると、「5月初旬に見に行ったがほとんど咲いていなかった」「湿地に咲いている紫の花を全部あやめだと思っていた」という声が毎年繰り返されています。5月中旬に菖蒲園を訪れた来園者が「満開のあやめが綺麗」と歓声をあげている足元をよく確認すると、実際に咲いているのは湿地を好む杜若であり、花菖蒲はまだ硬い蕾の段階である光景が日常茶飯事となっています。
東京都内の植物園ガイドボランティアは、観察ツアーにおける混乱の背景を次のように証言しています。
「お客様の約8割が『水の中に生えているからあやめ』とおっしゃいますが、植物学的には真逆です。本物のあやめは水に浸かると数週間で根腐れを起こして枯れてしまいます。お客様にはまず『足元が乾いていればあやめ、水が張ってあれば杜若、湿った泥地なら花菖蒲』という【水際トラップ】の回避法から手ほどきしています」(都内植物園ガイド談)
現場で混乱を避けるためには、花単体を見るのではなく「生えている足元の土壌水分」と「咲いている日付」を照合する多角的なアプローチが欠かせません。