白檀の香りを一言で定義するなら、「乳白色のまろやかさを帯びた、深遠で温かみのあるウッディ・オリエンタルノート」です。ヒノキやスギのような直線的で鋭い針葉樹の芳香とは一線を画し、森林の清々しさにココナッツやミルクを思わせるクリーミーな甘さと、微かなスモーキーさが絶妙に溶け合っています。
植物学的にはビャクダン科の半寄生常緑高木(学名:Santalum album)であり、光合成を行いながらも他の樹木の根から養分を吸収して育ちます。香りの核心となる精油は、樹齢30年以上の成熟した幹の中心部(心材)と根にのみ蓄積されるため、極めて長い年月をかけて大地の中で凝縮された神秘的なエッセンスと言えます。
フレグランスの世界では英語名のサンダルウッドとして表記され、香水のラストノート(ベースノート)に欠かせない重厚なアンカー(保留剤)として君臨してきました。揮発速度が極めて遅く、肌の上で体温と混ざり合うことで、数時間から半日以上かけて穏やかで官能的な余韻を残し続けます。
ここで多くの人が疑問を抱くのが、「仏壇に供える線香の匂いと同じなのか」という点です。日本の伝統的なお線香の多くは、白檀の粉末にタブノキの樹皮粉(糊粉)やその他の生薬(丁子、桂皮、龍脳など)を練り合わせて作られます。そのため、煙の刺激臭やスパイシーな漢方薬のニュアンスが強調されがちです。一方で、ピュアな白檀そのものや洗練されたフレグランスは煙を含まず、純度の高い芳香成分だけが漂うため、仏事のイメージとは全く異なるモダンで贅沢な印象をもたらします。