作曲を手掛けた松本晃彦氏がこのアプローチを選択した背景には、1990年代中盤の音楽業界における革新的な制作環境の普及がありました。
当時、ダンスミュージック界ではゼロ・ジー社(Zero-G)やスペクトラソニックス社(Spectrasonics)などが発売した商業用サンプリングCDが世界中で大流行していました。世界各国の民族音楽やアカペラ、ドラムループをロイヤリティフリー(使用許諾済み)でDAWに取り込み、全く異なるジャンルのビートとコラージュする手法は、アンダーワールドやプロディジーといった世界的アーティストの常套手段だったのです。
テレビドラマの劇伴制作において、従来の「昭和歌謡的なストリングス主体のサントラ」から脱却し、最新の洋楽クラブサウンドを取り入れようとした松本晃彦 作曲 経緯は、極めて野心的でした。監督の本広克行氏やプロデューサー陣が求めた「疾走感」「従来の刑事ドラマにない異質感」というオーダーに対し、中南米の熱狂(メキシコ民謡)と東欧の神秘(ブルガリア民謡)を最先端のブレイクビーツの上で衝突させるという発想こそが、本作のブレイクスルーを生んだ本質と言えます。