ネット上には「ネットに入れれば洗濯機でも洗える」という簡易的な情報が散見されますが、大手アウトドアメーカーの開発担当者や鞄専門のクリーニング職人は一様に警鐘を鳴らしています。なぜ、リュック洗濯で失敗する理由のトップに「洗濯機の使用」が挙げられるのでしょうか。その背景には、鞄ならではの複雑な構造と素材特性があります。
第一の理由は、生地裏面に施された「PU(ポリウレタン)コーティング」の破壊です。多くのデイパックや通学リュックには、防水性や生地のハリを保つために裏面コーティングが施されています。洗濯機の激しい水流や脱水時の遠心力は、このコーティングに微細なクラック(ひび割れ)を生じさせ、結果として「生地がボロボロと白い粉を吹く」「異臭が発生する」といった加水分解現象を決定的に加速させてしまいます。
第二に、背面パネルやショルダーベルトに内蔵されているEVAフォームなどの緩衝材(クッション材)の破損・ズレです。一度強い圧力で折れ曲がったり偏ったりした内部芯材は、元の形状に戻りません。背負い心地を劇的に損なうだけでなく、外見のシルエットが著しく崩れる致命傷となります。
どうしてもリュックの洗濯機での洗い方を試みる場合は、「洗濯表示タグに洗濯機可のマークがある布製エコバッグタイプ」に限定すべきです。通常の中型〜大型リュック、芯材や多数の金属ファスナーを備えたバッグは、物理的な手洗いが唯一の安全策となります。