教育現場における図画工作・美術指導の歴史と、認知心理学の研究成果を照らし合わせると、子どもが描画において自信を深めるか挫折感を味わうかは、「自分自身の表現言語を納得して選択できたか」にかかっています。写真のようにリアルに描くことだけが美術の正解ではありません。むしろ、歴史的モニュメントの本質的な特徴を自分の手で捉え直すプロセスそのものに、平和学習の本質が存在します。
ポスター制作に取り組むにあたり、自分やお子さんがどの手法を選択すべきか、以下の客観的な判断基準を参考にしてください。
【幾何学手書き・シルエット表現をおすすめできる人】
- 絵の具やポスターカラーの混色、グラデーション塗りが好きで、背景づくりに時間をかけたい人
- 「平和の尊さ」「命のつながり」といった抽象的なテーマを、象徴的なアイコンで分かりやすく伝えたい人
- 夏休みの限られた制作期間の中で、ストレスなく確実に完成させ、入選レベルの構図美を目指したい小学生・中学生
【細密な写実描写や過度な精密表現に慎重になるべき人】
- 下絵の狂いや線のズレが気になり、何度も消しゴムをかけて画用紙を傷めてしまいがちな人
- ポスターの標語(文字)をどこに配置するかを決めないまま、いきなり中心から描き始めてしまう人
- コンクリートの質感や鉄骨の破損状況を再現することに意識が集中し、色使いが全体的に暗褐色や黒に偏ってしまう人
造形心理学において、シルエットや簡略化されたシンボルは「観る側の記憶や想像力を引き出し、自発的な共感を促す効果(アフォーダンス)」が高いことが知られています。細部を大胆に省略し、凛とした骨組みの美しさを前面に出すことは、決して手抜きではなく、高度に計算された知的で誠実な表現手段なのです。