復活の呪文は、昭和の遺物として過去に埋没したわけではない。スクウェア・エニックスは2017年の『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』(およびその後の『DQ11S』)において、システムとしての「ふっかつのじゅもん」を劇的に復活させた。
DQ11における呪文システムは、単なる懐古趣味のイースターエッグではない。プラットフォームの垣根を越えるクロスセーブの代替機能として設計された点に高度な意図があった。PlayStation 4、Nintendo 3DS、Nintendo Switch、PCといった異なるハードウェア間で、セーブデータを直接同期できない環境であっても、ふっかつのじゅもんを入力すれば「おおよそのストーリー進行度と所持品」を再現してゲームを再開できるようにしたのである。
さらにゲームファンを唸らせたのが、初代DQ1やDQ2の当時の呪文がそのまま通る仕掛けだ。ファミコン版当時に入力した「もょもと」の呪文をDQ11の教会で打ち込むと、序盤にしては不釣り合いな強力なアイテムを持った状態で物語がスタートするなど、かつて少年時代を過ごしたプレイヤーへの特大のリスペクトが込められていた。
ハードウェアの性能限界によって生まれた苦肉の策が、40年近い歳月を経て「世代とハードを繋ぐ文化的共通言語」へと昇華した。この歴史的文脈の継承こそ、ドラゴンクエストというシリーズが日本のエンターテインメントの頂点に君臨し続ける所以である。