福田こうへいの歩みは、決して平坦なエリートコースではありませんでした。岩手県雫石町出身の彼は、民謡歌手であった父・福田岩月さんの背中を見て育ちながらも、当初は一般企業である呉服店に勤務する営業マンとして生計を立てていました。転機が訪れたのは23歳の時、父の他界をきっかけに本格的に民謡の道へ足を踏み入れたことです。
天性の声量と並外れた努力は瞬く間に開花し、2002年の「第25回日本民謡ヤングフェスティバル」グランプリをはじめ、数々の全国大会で優勝を飾るなど、民謡日本一の経歴を引っ提げて名実ともに民謡界の頂点に君臨しました。しかし、安定した生活を捨ててプロの演歌歌手を目指す決断には並々ならぬ覚悟が必要でした。
背水の陣で臨んだメジャーデビューシングル『南部蝉しぐれ』の発売日は2012年10月24日。当初は東北地方を中心とした有線リクエストや地道な店頭キャンペーンから火がつきました。一度耳にすれば忘れられない突き抜けるハイトーンボイスと、魂を揺さぶる節回しは瞬く間に口コミで全国へ波及。オリコンの演歌・歌謡シングルチャートで首位を獲得しただけでなく、総合チャートでも上位にランクインする異例の快進撃を見せます。
その勢いは留まることを知らず、翌2013年には第55回日本レコード大賞で新人賞を受賞。さらに同年の第64回NHK紅白歌合戦への初出場を果たし、お茶の間にその圧倒的な実力を知らしめました。脱サラから掴み取ったこの栄光は、愚直に歌と向き合い続けた男の執念が生んだ必然の成果でした。