物語のクライマックスにおいて、視聴者が息を呑んで見守ったのが、ヒロイン・広瀬未知(松嶋菜々子)の生命の行方でした。周囲からの激しいバッシング、教育現場からの追放、そして黒澤光(滝沢秀明)の母・鏡子(黒木瞳)による執拗な引き離し工作を乗り越え、未知の体内には光との新しい命が宿っていました。しかし、過酷な逃避行と精神的摩耗が重なり、未知は頭蓋内血腫によって意識不明の昏睡状態に陥ってしまいます。
医師からは「母体か胎児のどちらかを諦めるべき」という絶望的な選択を迫られますが、光はどちらの命も信じ抜くことを決断します。最終話の病室シーンで、光は未知の手を握りしめ、かつて二人が誓い合った言葉や想い出を吹き込んだテープを再生し続けます。心電図の機械音が響く中、光の涙が未知の頬に零れ落ちた瞬間、未知の指がかすかに動き、ゆっくりと瞳が開かれました。頬をつたう一筋の涙と、光に向けられた柔らかな微笑み――。ここで物語は、光と未知が光あふれるベッドの上で抱き合い、自由の象徴である指輪が映し出されるラストカットへと昇華します。
ネット上では長年、「あのラストシーンは光が見た夢や幻覚(未知の死)を意味しているのではないか」という悲劇的解釈も囁かれてきました。しかし、チーフ演出を担当した土井裕泰をはじめとする制作陣の意図や劇中の医療描写を精緻に読み解くと、未知は医学的な限界を超えて意識を取り戻し、命をつないだと捉えるのが極めて自然です。ドラマが終始提示し続けた「既成概念という魔女狩りからの脱出」と「愛による自由の獲得」というテーマにおいて、彼女の覚醒は単なるハッピーエンドを超えた、精神的独立の完成を意味していました。