「朝からハードに追い込んだのに、なぜか体がだるく筋肉量も増えない」という悩みの根底には、午前中特有の体内環境があります。メディアやネット上で「朝筋トレは逆効果」と騒がれる最大の要因は、コルチゾールと朝筋トレの関係性および「絶食状態による代謝崩壊」にあります。
人間は起床前の時間帯から、体を覚醒させるために副腎皮質からコルチゾールを分泌します。起床直後から午前8時前後は血中コルチゾール濃度が1日の中でピーク(約15〜25μg/dL)に達する時間帯です。コルチゾールには脂肪を分解する働きがある一方で、筋タンパク質をアミノ酸へ分解する「筋異化作用」を強く持っています。
ここで朝筋トレは空腹時だと逆効果な理由が浮き彫りになります。睡眠中に約6〜8時間の絶食を経た体内は、肝臓や筋肉に蓄えられたグリコーゲン(糖質)が大幅に減少しています。エネルギー源がない状態で高強度のトレーニングを実行すると、身体は生命危機を感じ、自らの骨格筋を崩壊させてエネルギーを作り出す「糖新生」を急激に加速させます。結果として、脂肪も燃えるもののそれ以上に「筋肉が削げ落ち、結果的に基礎代謝が落ちる」という本末転倒な事態に陥るわけです。
加えて、睡眠から覚めたばかりの生体は交感神経への切り替えが不完全であり、血圧の急激な変動や関節可動域の狭小化が起きています。こうした生理学的メカニズムを無視した無理なトレーニングが「逆効果」という悪評の正体です。