多くの家庭で「海苔を袋のまま輪ゴムで留めて常温放置する」、あるいは「とりあえず冷蔵庫に入れておく」という光景が見られます。しかし、この二大習慣こそが海苔の寿命を極端に縮めている元凶です。
水産加工技術の専門分析によると、海苔の水分含有率が5%を超えるとパリパリ感が消失し、7%〜8%に達すると酸化と色素分解が急激に進行します。梅雨時や夏場の日本の平均室内湿度は70%〜80%に達するため、開封した無防備な海苔はわずか数時間外気に触れるだけで空気中の水分を飽和限界まで吸湿してしまいます。これが海苔常温保存の注意点として最も警戒すべき点です。
「それなら冷蔵庫で冷やせば安心なのでは」と考えるのが自然ですが、ここに最大の罠が潜んでいます。冷え切った海苔のパッケージを暖かい室内に取り出した瞬間、眼鏡が湯気で曇るのと同じ現象、すなわち「毛細管結露」が袋の内部と海苔の表面で一気に発生します。出し入れを繰り返すたびに水分を自ら浴びせている状態になり、結果として常温放置以上の速度でシナシナに劣化してしまうのです。
さらに見逃せないのが光と熱による劣化です。海苔特有の深い黒緑色は、クロロフィル(葉緑素)、フィコビリン(紅藻素・藍藻素)、カロテノイドという複数の色素が絶妙なバランスで重なり合って生まれています。湿気と紫外線、蛍光灯の光に晒されると葉緑素が壊れ、赤褐色のフィコビリンだけが残留します。これが「古い海苔が赤紫色に変色する」現象の正体であり、徹底した海苔変色防止策を講じなければ、味だけでなく見た目の美しさも失われてしまいます。