体細胞分裂において、母細胞と娘細胞の遺伝情報は完全に一致します。皮膚がすりむけて再生するとき、元の皮膚と全く同じ遺伝子を持った細胞が増殖しなければ困るため、完全なコピーを作ることが至上命題だからです。
対照的に、減数分裂で生まれた娘細胞は、元の細胞とも、同時に生まれた他の娘細胞とも遺伝情報が異なります。兄弟姉妹が同じ両親から生まれても顔立ちや性格が異なるのは、まさにこの仕組みによるものです。この驚くべき多様性を生み出すエンジンが、減数分裂の第一分裂で起きる相同染色体の対合と、それに伴う「乗り換え」です。
第一分裂の前期、父由来と母由来の同じ形・大きさを持つ相同染色体がぴったりと引き寄せられて結合し、「二価染色体」を形成します。このとき、染色体の一部が物理的に交差してちぎれ、互いの断片を交換する現象が起こります。これが乗換えと遺伝的多様性の理由です。さらに、相同染色体が左右どちらの極へ引っ張られるかも完全なランダムであるため、生まれる生殖細胞の遺伝的パターンは天文学的な数字に達します。病原体の流行や急激な気候変動が起きた際、集団全員が同じ遺伝子を持っていれば全滅しかねませんが、多様性があれば誰かが生き残ることができます。命の保険として、この複雑なシャッフルシステムが機能しているわけです。