『海街diary』の凄みは、四姉妹の輝きだけでは成立していません。物語の屋台骨を支え、画面に陰影と重厚感を与えたのが、脇を固めたベテラン俳優陣の演技でした。
特に圧巻だったのは、大叔母・史代を演じた故・樹木希林の存在です。法事の席で、仏壇の前に座る姉妹たちに対して「あんたたち、母親を許してやりなさいよ」と世間体を気にする親戚の冷酷さを滲ませながらも、帰り際には「あの子(すず)をよろしくね」と情を見せる。わずか数分の出演シーンにもかかわらず、人間が持つ割り切れない善悪の二面性を一瞬で表現する演技は、映画のリアリズムを数段引き上げました。
また、次女・佳乃の上司である坂下を演じた加瀬亮の佇まいも見逃せません。地方の信用金庫という狭いコミュニティの中で、倒産寸前の零細企業に寄り添おうとする誠実さと、大人の男性特有の諦念を絶妙な塩梅で体現。派手なセリフに頼らず、眼鏡の奥の眼差しや間の取り方一つで観客に登場人物の背景を想像させる演技は、是枝映画が求める「生活の匂い」そのものでした。
さらに、姉妹を捨てて家を出た実母を演じた大竹しのぶと綾瀬はるかの対峙シーンは、本作のハイライトの一つです。法事の後に立ち寄った高台で、母娘がお互いのエゴと傷つきやすさをぶつけ合い、最終的には祖母が残した「梅酒」を通じてかすかな和解へと至るプロセスは、名優同士のぶつかり合いだからこそ描けた緊張感に満ちていました。